「ケルトゥ/愛は盲目」イルマル・ラーグ監督

EUフィルムデーズ2014のラインナップ、エストニアの映画『ケルトゥ/愛は盲目』を観てきました。監督は『クロワッサンで朝食を』のイルマル・ラーグ。この作品が長編第2作目。制作されたのはで2013年で、この上映が日本での初公開となりました。

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エストニアの小さな村が舞台。極端に口数が少なく、内向的な性格のケルトゥ。彼女は人とうまくコミュニケーションを取ることができず、家族は「知恵遅れ」とみなしていて、村人たちも心に病を抱えた娘だと思っている。そんなケルトゥが、「女ったらしでアル中のダメ男」のヴィッルに、何故か心を寄せてしまう...。誰にも知られないまま密かな恋心を抱き続けるが、あるときその想いを託した絵ハガキをヴィッルに送る。ヴィッルは突然のことに驚きながらも、そのハガキを大事にポケットにしまうのだった。。
そんなある日。夏至祭の夜、ケルトゥは突然姿を消してしまう。家族は慌てふためき警察沙汰になってしまうのだが、翌朝、アル中男の部屋にいたことが発覚。その夜いったい何があったのか、対人恐怖症の傾向があるケルトゥは人に話すことができないし、ダメ男と烙印を押されているヴィッルの言うことなど、誰も最初から聞こうとはしない。小さな村での出来事なので、様々な憶測を呼んで周囲は騒然となり、激しい怒りがヴィッルに向けられるのだが・・・・

ストーリーが進行する中で、フラッシュバックの形で映像が挿入され、その夜に何があったのかが徐々に明らかになってきます。そして、二人の想いの激しさと切なさに胸を打たれます。二人がお祭りのあとの夜道を並んで歩きながらクッキーを食べるシーンが、私にとっては深く心に響きました。そんなささいな一瞬があっただけで、お互いがかけがえのない存在になることだってあるでしょう。他の人には決してわからなくっても。

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登場人物それぞれの心理描写がとても丁寧で緻密。私はすっかり作品世界に浸りきってしまって、ケルトゥに父親が暴力を振るうシーンでは、思わずこちらまで身構えてしまったほどでした。。 二人の関係が周りの人間たちを巻き込んで複雑に展開していくのですが、善人/悪人というような単純な世界の切り分け方はしておらず、みんなそれぞれに問題や悩みを抱えながら懸命に生きている人間として描かれています。その映像は残酷でリアリスティックなまなざしでありながら、根底には確固たるヒューマニズムの精神が息づいている。ケン・ローチ監督の初期の作品を観た時の感触に似たものを感じました。ひさびさに映画らしい感動を得ることのできた、素晴しい作品でした。本当に観て良かった。。

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ところで、この映画の副題「愛は盲目」という言葉は、映画を観たあとの感想としては「ちょっと違うのでは?」と私は思ってしまいました。タイトルから連想されるものと、実際のストーリー展開が良い意味で裏切られていくという意味では、まぁそれでも良いのかもしれませんが。二人は愛の向こう側の風景をしっかり見ようとしていました。その愛が「見えていない」のは、むしろ周りの人間たちだったのではないでしょうか。

この日は上映前と上映後に、主演女優ウルシュラ・ラタセップさんのトークショーがありました。こんな貴重な場面に立ち合えたのは本当に幸せなこと。。映画の中で見る印象とはまた違って、とてもチャーミングな素敵な女優さんでしたよ。

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上映前の挨拶では、エストニア特命全権大使のトイヴォ・タサ氏がいきなり登場するサプライズ!事前情報を聞いてなかったので本当にびっくり。 大使はいつにも増した笑顔でした。

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質疑応答の中で、この映画の舞台がエストニアのサーレマー島であったことを知りました。サーレマー島はいつか行ってみたいと思ってる場所。あの緑の平原の道を、いつか歩いてみたい。

★EUフィルムデーズ2014の公式サイト→http://www.eufilmdays.jp