先月のこと

先月、高校時代からの親友が遠いところに旅立ってしまった。あまりに突然のことで、どう受け止めていいのかわからないまま、あっという間に、1ヶ月が過ぎてしまった。
 
その友人と親しくなったのは高校からだけど、小学校からずっと同じだったので、かれこれ30年以上のつきあい。高校で美術部に入って、その時の同期2人が無二の親友となった。3人とも同じ市内だったから、学校の行き帰りの列車でも、お昼休みも放課後も美術室になんとなく集まって・・・という具合で、いつも一緒だった。絵の話、映画の話、本の話、いろんなことを3人でいつまでも飽くことなくずっと話した。そして、3人の中で一番絵の才能に恵まれていたのが、その友人だった。彼が描いた風景画をはじめて見た時のことは、今でも鮮烈に覚えている。「あー、こんなやつには絶対かなわないな......」って正直思ったものだった。そんな友人が身近にいてくれたことが、どれだけ大きな影響を与えたことだろう。卒業後も3人で一緒に東京に出て来て、よく集まって遊んだ。この数年は年に数回しか会えなかったけど、美術部の後輩と友人の奥さんと6人で集まると、一晩中尽きることなくいろんな話をした。久しぶりに会ってもまったく変わらず、何の気兼ねなく話ができる友人は本当に貴重だなって思う。
 
高校時代、私はもっぱら漫画ばっかり描いていた。当時の美術部は、純粋に「絵を描くため」というよりも、漫画や映画、アニメーション、SF、ファンタジー、特撮などなど、よろずの好事家たちが集う「場」になっていたと思う。私たちの美術部内には「漫画制作班」なるものもあって、そこで活発に同人誌を作ったりしていた。その内容やレベルはさておき・・・(いや、まったく恥ずかしい代物ですが・・・)、そのときの皆の情熱や志は非常に高いものだったと、私は自負している。今思うと、その時にコピー機を駆使して、文字やイラストを切り貼りして誌面を作ったりしたことが、今の自分の仕事の原点になってるようにも思う。その友人とも競うように作品を描いては、もっと上手くなりたい、次こそはもっと良い作品を描きたいと、いつもそんなことばかり考えていた。文化祭に向けて100号の大きな油彩画を、皆で一緒に描いたこともあったな。大山へスケッチ会に行ったり。そして高校3年になってからは皆で自主制作の紙アニメーションを作ったりした(→「自主制作の紙アニメーション@25年前・高校時代」)。この春に、たまたまその古い8ミリフィルムが出て来て、この機会にと思ってDVDに焼き直した。今度皆で集まる時には、その映像を観ながら皆で苦笑するのを楽しみにしてたのに・・・もうそれも叶わない夢になってしまった。
 
その友人は映画や本の好みが私と重なることが多く、一番気の合う奴だった。良い映画を観たり、素晴らしい本に出会う度に、「今度あいつに会ったらこの話しよう」って、いつも自然にそんな風に思っていた。一番大事に思ってた友人だったのに、どうしてもっと会う時間をつくれなかったのか、今は悔やまれてならない。あいつは本当は何をやりたかったんだろうなって、ときどきぼんやり考える。お互い、これから何をやっていこうかって、そんな話を一度じっくり話し合ってみたかった。また絵筆を取ってもらって、こっちが嫉妬するようなすごい絵を描いてほしかった。また3人で一緒に大山を散策してみたかった。心を割って話できる友人が、もうここにいないのは、たまらなく寂しいよ。