■2001年11月29日（木）

やっと新しいことを始める元気が少し出てきた。さっそく次の仕事も一件入ったし。来週はまた忙しくなるかな。時間のある今のうちにやっとくべきことがたくさんあるけど、今はもうしばらくこのままのんびりしていたい。 最近自分の中で、サッカー熱がまた盛り上がってきた。やっぱりいい試合を続けて見ると、サッカーの面白さに夢中になってしまう。もうすぐワールドカップの抽選。楽しみ、楽しみ。

■2001年11月27日（火）

自宅で仕事をしていると銀行に出向くのがおっくうで、いろいろ調べた末、e-BANKの中でソニーバンクを選んで口座を持つことにした。ブラウザ上で現金の出し入れが確認できるので、とっても便利だし、なんだか楽しい。 このところ支払いばかりが続いてたので、入金の記載が欲しくて先日のデザインフェスタの売り上げなどを預け入れしに行った。小銭をジャラジャラと楽しみに持っていったのだけど、入金明細の金額を見て、そのあまりにはかない数字の移り変わりに、なんだかひどくさみしい気分になった。小銭として重みはあっても、打ち出された金額を見ると本当にわずかなものでしかない。それまでの苦労を考えるとどうにも割が合わない気がしてしょうがなかった。 その後電車に乗ってから、あらためてその入金明細を眺めてみた。確かに金額としてはちいさなものだ。でもそのお金はけっしてお座なりに扱ってはいけないものだと思い直した。私の作品を気に入ってくれる人たちがいて、それに対価を払って求めてくれた。私はそのことに、もっと胸をはっていいと思う。そして、もっともっと感謝しなければいけなかった。金額の問題じゃない。大事なことは、どれだけの人の想いが込められているかということに違いないのだから。 なんだか貧乏臭い話だけれど、はじめて小銭一枚の重みを感じた気がして、夕飯の買い出しにも妙に気を使ってしまった。ほとんど主婦感覚で値踏みしている自分。それはそれで、結構楽しい経験だったりもする。今はまだ切羽詰まった生活をしてるわけじゃないけれど、こういう感覚も本来必要だったんだなぁと思ってみたりした。 世の中には天文学的な数字のお金を、日々コントロールしている人たちがいる。その一方で、私みたいに小銭の勘定で一喜一憂している人種もいる。皆それぞれの舞台で大変なんだろう。世の中の経済や流通の仕組みを支えている方々には申し訳ないけれど、どこで何をやっていたって、たいした違いがないように思えて仕方ない。それぞれ自分に与えられた役を、精一杯演じきるだけだ。 私は私なりに、この仕事を続けていけたらいいなと思う。

■2001年11月26日（月）

二日間のデザインフェスタが終わった。ずっと余裕のない毎日が続いて準備が何もできず、途中で意欲が失せてしまったりもしたのだけど、実際に参加してみて本当に良かったと思う。収穫と思える出来事もたくさんあった。展覧会の時とは違う客層の人たちと出会えたので、それだけでも貴重な経験だった。素直に、イベントとして楽しかったと思う。またこの次参加するのが楽しみだ。 これでこの数カ月にわたって取り組んできたことが、とりあえず一段落した。とても疲れた。今日は何も仕事せず、どこにも出かけないで一日だらだらと過ごしてしまった。急にいろんなことが片付いて、緊張の糸が切れてしまった気がする。私は集中力にとてもムラが多いので、こうなってしまうともう何もできなくなってしまう。まったく使い物にならない人間になってしまう…。どうしようもない。その自覚があってもどうにも気持ちがつながらない。 こんな時は‥‥とにかくぐーたらしてるしかない。どんな美味しいものを食べるより、どんな素敵な映画を観るより、面白い本を見つけるより、私にとって「ぼーっ」としていられる時間ほど、幸せなものはない。ぼーっとする時間がない生活は、何にも耐え難い。だからしばらくは、ここでのんびりしていよう。

■2001年11月23日（金）

昨日はとても疲れていたはずなのに、眠ろうと思ってもなかなか寝れなかった。やっと朝方眠っても3時間ほどで目が覚めてしまった。気持ちが高ぶっていて、まだ体から緊張が抜けていなかったのかもしれない。午前中にデータを整理して、午後一番に印刷の工場に持って行った。これでこの3ヶ月間ずっと取り組んできた仕事がひとつ終わったのだ。嬉しいというより、とにかく自分の責任を果たせてホッとした。 夜になって、先日発注したカレンダーが出来上がったので取りに行った。急いでデータを準備したので、色の調整がうまくできているかずっと気になっていた。いざ完成品を手にしてみると、思っていた以上にきれいに仕上がっていて、かえって拍子抜けしてしまった。自分としてはとても満足のいく出来具合いだ。なんだかとてもうれしい。ひさしぶりに自分の作品と言えるものができた気がする。 友人達と少し飲んで帰ってきたら、いつの間にか眠っていた。どうやって寝たんだかまったく覚えていない。朝方目が覚めたら、テレビも電気もつけっぱなしだった。ベッドに移動してまた寝た。起きたらもう昼過ぎだった。しばらく呆然と時間をつぶしてから、明日の準備のための材料の買い出しに銀座まで出かけて、帰ってきてごはん食べたらまた眠ってしまった。一日の大半を眠ってしまったことになる。おかげで体もすっかり元気になった。ひさしぶりにスッキリして気分がいい。でももうすぐ一日が終わってしまうな。 明日の準備を何もしていない。困った。これから朝まで、できるだけがんばらないと。デザインフェスタに参加することに、正直なところ期待していなかったのだけど、だんだん楽しみに思えてきた。たくさんの人に自分の作品を見てもらえる機会なので、二日間のイベントをめいっぱい楽しむことにしよう。

■2001年11月22日（木）

全部おわった。 あとは印刷の行程を見守るばかりだ。 うれしいのだけど…今は疲れてなんの感慨も湧かない。 とにかくぐったりだ。 でも最後の最後まで手は抜かなかった。気になるところは全部やり直したし、中途半端な仕事はひとつもしていない。自分としてはベストな仕事ができたと思う。もちろん完璧な仕事なんてあり得ないけれど、与えられた条件の中で、自分にできる限りのことは尽したと思う。どれだけの仕事ができたのかまだわからないけれど、私自身は今の段階ではとても満足している。本として仕上がる日がとても楽しみだ。 この仕事だけは、あとで後悔するようなことは絶対したくなかった。何を差し置いても、どんな無理をしてでも、この仕事を全力でやり遂げたいと思っていた。たくさんの人たちがこの本の仕上がりを待ってくれているし、自分にとっての一番大事なことがこの仕事にかかっていると思えたからだ。ここでいいかげんなことをしてしまったら、今まで自分がしてきたいろんなことが、急に壊れてしまうような気もしていた。本当はそのことが恐かったのかもしれない。……何を言ってるんだろう。なんだかよくわからなくなってきた。 やっとひとつの仕事を終えたこの瞬間を、きちんと記述しようと思ったけれど、まったく頭が働かない。別に眠たいわけじゃない。一日食べてもいないし寝てもいないのだけど、今はとにかく体がだるいだけだ。少し休めば、いろんなことを整理して考えることができるんだろうか。

■2001年11月20日（火）

私のイラストを綴ったカレンダーの制作を、かねてから計画していた。「今年こそは」の思いで予定を立てていても、いざ始めようと思うとなかなか考えがまとまらず、制作の準備が延び延びになってしまっていた。９月以降は時間的な余裕がまったくなくなってしまい、デザインフェスタにも間に合いそうにないので、今年はあきらめるつもりでいた。でも最後の望みをかけて、いつもお世話になっている業者の方に相談したらなんとか間に合わせてくれるというので、急きょ制作に取りかかることになった。昨日の夜からずっと休みなくMACに向き合って、頭がおかしくなるくらい集中して作業をした。そしてまる一日かけて、やっと、やっとその版下データが仕上った。本当に大変だったけど、久しぶりに自分のための仕事をして、今はとても充実した気分だ。 今回制作したのは、CDケース型の卓上カレンダー。どこにでもあるタイプのもので、まったく何の仕掛けも工夫もない。今時、卓上のカレンダーなんてパッとしないし、誰も喜ばないかもしれない。たくさんばら撒いたって、いったいどれだけの人が実際に用立ててくれるのかわからない。でも誰かが私のカレンダーを気に入ってくれて、机の片隅にでも置いてもらえたら、一年という時間を一緒に過ごしてもらえたら、私はそれだけでうれしい。できることなら、たくさんの人に気に入ってもらえるような「きれいでかわいい」カレンダーを、これから毎年つくっていけたらと思っている。（経済的な余裕があれば） 今回のカレンダーの出来上がりがとても楽しみでもあり、ちょっと恐い気もする。とにかく時間がない中での突貫工事だったので、その仕上がりに多少不安が残る。イラストをスキャンニングした時の色調の補正がうまくできているかが心配だ。人の原稿を扱う時には、自分の色補正の技術に相当な自信が持てるのだが、自分の絵のこととなるとどうしていいかわからなくなってしまう。そもそも同じ人間がやるべき作業ではないように思う。原画を忠実に再現させるために最大限の努力をすべきなのか、原画以上にきれいに見せるための工夫をすべきなのか、私には判断がつかない。色調を変えようと思えばいくらだって変えられるし、気に入らない箇所を修正したり加筆することもできる。そんなことをやり始めるとキリがないのだ。もちろん原画の色調にできるだけ近づくよう努力したが、ずっと迷ってばかりでたくさん手数を踏んでしまった。色の補正は思いきりよくやらなければ元の色情報が壊れてしまい、良い結果が得られない。わかってはいるのだけど。 まぁ、今更あれこれ悩んだって仕方ないか。あとは信頼している人に出力・印刷行程を託して、きれいに仕上がることを祈るしかない。

■2001年11月19日（月）

本の制作がほぼ校了になったので、いよいよ仕上げの段階になった。しかし校了といってもこれで作業が終わったわけではなく、すべてのページを出力用にもう一度作り替えなければいけない。なにしろページ数が多いから、結構大変な作業だ。デザインフェスタの準備をまったく手をつけていなかったので、今それも平行してドタバタやっている。会場で配付するハガキをなんとか間に合わせるために徹夜で図案を仕上げて、朝一番で工場に届けてきたところだ。これからカレンダーの版下データも、今日中に持っていかないといけないのだけど・・・。できるんだろうか？、本当に。死にそうな気分。

■2001年11月15日（木）

本の仕事が最後の追い込み。 こんな時に限って他の小さな仕事も重なったりして、今週は余裕がない。一日の起きてる時間のほとんどを、MACのモニターに向き合って過ごしている。それ以外は食事する時間か、ニュース番組見てるくらい。こんな毎日が続くとだんだん気がめいってくる。嫌だなこんな生活。 2台のMACのハードディスクが、100ページ分の画像でもういっぱいになってきた。増設してあるので合計で40GBも容量があったはずなのに。この仕事が終わったら、時間かけてメンテナンスしないといけないな。ひどく酷使してしまったから。

■2001年11月13日（火）

しばらく絵を描かずにいると、絵を描く気分を取り戻すのに時間がかかってしまう。いつもこの繰り返しで効率が悪くって仕方がない。絵を描く自分と、日常的な仕事をしている自分とは感覚的な隔たりが大きくて、その切り替えが難しい。絵を描く時の自分、印刷の仕事をしている時の自分、デザインの仕事をしている時の自分、MACのオペレーターに徹している時の自分、ものを考えたり文章を書いたりしている時の自分‥‥人から見ればどれも同じに見えるのだろうが、自分の中ではお互いに距離があって、その折り合いも悪い。もう少し上手に、その場毎に自分を使い分けできればいいのだけど、なかなかそれができないので苦労する。だからいつまでたっても中途半端な仕事しかできず、まともな成果が残せないのだろう。 周りから一番求められるのは、どの自分だろうか？たぶん印刷の手配の仕事をしながら、人に愛想良くふるまっている自分なのだろう。一番お金かせいでいるのは、職人になりきって版下を組んでいる自分だ。でも絵を描く自分に期待してくれる人も、わずかながらいてくれる。会ったこともない方からメッセージをいただいたりするのは、絵が描ける自分に対してだ。私自身は、少し難しそうな本を手にとっていろいろ考えたり、文章を書いてみたりする自分を大事にしたいのだけど…。それは誰からも望まれてていないんだろうな。 求めている自分の像と、周りから求められる自分の像‥‥。皆、どうやって折り合いをつけているのだろう。誰もがそれぞれ何人もの自分を抱え込んで、悩みながら生きているのに違いないだろうけど。

■2001年11月12日（月）

本づくりの仕事がもう後少し。この一週間でどうにか片をつけることになる。週末は詰めの校正のやり取りと毎月のイラストの締め切りが重なって大変だった。でも昨日はまたライブに出かけて、しばし仕事を忘れて楽しんでしまった。たまには心に栄養も必要だ。 Live at Star Pine's Cafe ＜ZAKURO＞ AYUO：ブズーキ、ギター、ヴォーカル 沢田穣治：ベース他 岡部洋一：パーカッション 内海イズル：ターンテーブル MAHA：ベリーダンス ＜GYPSY COHJIZUKIN BAND＞ スズキコージ：ヴォーカル EMILY MOGAMIGAWA：ヴォーカル TOSHIKI SAWADA：パーカッション AYUO：ブズーキ、ギター、ヴォーカル HONZY：バイオリン 高橋鮎生が今年結成した新ユニットZAKUROと、スズキコージ率いるGYPSY COHJIZUKIN BANDの豪華二本立て。前半はZAKUROのステージ。エレクトリックな音源をベースに、バルカン半島の伝統音楽の要素とアバンギャルドな音質がミックスされた独特な音楽世界。そして後半、日本が誇る（？）最高のジプシー音楽バンドの登場！今回も無茶苦茶に破天荒な演奏で、私たちみんなを楽しませてくれた。 打ち合わせ通りなのか適当にやってるんだか、いつもながらのハチャメチャな進行ぶりで何度も笑わされた。でもときどき胸にグッとくるようなメロディを持ってきたりして、ドキッとさせられたりもする。あんなに豪華なミュージシャン達を従えて、好き勝手なことをして楽しんでいるスズキコージさんの姿を見ていると、なんだかこっちまで幸せな気分になってくるから不思議だ。 私は今回、バイオリンをひいていたHONZYの存在がとても気になった。本人の作曲らしき演奏もあって、その本来の個性が充分発揮されていたと思う。これからの活動がとても楽しみな人だ。本当に素敵な人たちばかり。たくさんの元気をもらえた気がする。

■2001年11月8日（木）

【JPC Conference 2001】の2日目。 『パブリッシング ニューメディアDAY』 オープニングは村上 龍×伊藤穰一という豪華ゲストの対談。「表現者とメディア」というテーマで、新しいメディアは表現する側にどのような影響を与えるのか、それは私たちの生活にどのような変化をもたらすのか、を語ってもらう内容であった。しかし二人が話し始めるとどんどん脱線していって、途中から時間も気にしないくらい話が盛り上がって楽しかった。 そもそもメディアとは何なのか、表現とは何なのか、これからの時代に何を表現していくのか、表現する必要をどこに感じていくのかという、本質的な問題にまで踏み込んだ議論となった。話を聞きながら、いろいろと考えさせられた。結局大事なことはメディアの有り様ではなく、私たち自身の生き方の問題なのだと気づかされる…。 近年本の売り上げは連続して落ち込んでいる。映画業界も冷えきっている。音楽業界もいくつかの「大ブレーク」をかすかな生命線としている現状だ。旧式のメディアは消費を生まない、もう井戸は枯れてしまったとばかりに、皆が新しいメディアへ横滑りして新しいビジネスを期待する。一方で、「大事なのはコンテンツ、その中身」と言われ続けて久しい。大きな企業はこぞって、新しいコンテンツ探しに躍起になっている。でもそこで言われているコンテンツとはそもそも何なのか？実際、新しいメディアは新しい消費を生んでいるのか？新しい技術の登場で何かが変わったのか?　----何も変わった気がしない。新しいメディアに特性を発揮した表現が、何かしら現れ始めたとも思えない。企業が提供するコンテンツはどれも皆、相変わらず大量生産・大量消費を前提とした価値観を反映したものでしかない。 20世紀における出版・放送といったマスメディアは、大衆に情報を供給し、大衆のデモクラシーを発展させる大事な役割を担ってきた。しかし同時に、情報のレベルを平均化し、大衆をコントロールしやすくするための、管理システムとしての一役も担ってきた。実際大衆もそれを支持し続けてきたし、横並びの心地よさにあぐらをかいてきたのだと思う。しかしそのシステムがほころびはじめると、今度は一人ひとりの差別化を期待されるようになってきた。誰もが人と違うことを要求され、新しい価値を創造せよと煽られる。マスメディアもそれを後押しするよう求められる。しかしそうなると個々のメディアは、それまでのあり方を大幅に変更せざるを得ないだろう。平均的な生活習慣を共有する不特定多数ではなく、それぞれの趣向とこだわりを主張する個人こそが、メディアを選ぶ主人公となるのだ。大きな社会的な役割に裏打ちされた「マス」という衣を脱ぎ捨てなければならなくなる。 長い間この世界では、大きくなること、数が増えること、成長していくことが何より価値を持っていた。国でも、企業でも、私たち自身の生活の中でも、それは信仰にも近い扱いで優先されてきたと思う。でも今では誰もがそんなものは幻想だったと知っているし、永久的な成長などあり得ないとわかってしまった。まず私たちの価値観が変わりつつある。そしてメディアの果たす役割も変わってきた。今はその大きな転換期にあるのだと思う。 しかしメディアに携わる人達は、相も変わらず同じような情報を発信してばかりいる。そして私たちも、相も変わらず同じような情報にしがみついて生きている。ちょっといいお店、ちょっとかわいい服を知って、それが私たちの生活にどれほどの意味を持つというのか。そこに何もないことがわかっていても、私たちはやっぱりテレビや週刊誌やスポーツ新聞を見ることに、毎日たくさんの時間を潰してしまう。私たちは周りの人達から遅れてしまうことを、そこから外れてしまうことを、何より恐いと思うからだ。私たち自身のこの体質を変えない限り、日常の風景も変わっていかないだろう。本当に必要な情報は得られないだろう。生活は豊かにならないだろう。住み心地のいい世界は拓けていかないだろう。 日々変化の幅は大きく、そのスピードも早い。新しい時代の波に乗っていくことは大切なことだと思う。でもその一方で大事なことは、周りの変化に振り回されないための「自力」を、自らが培っていくことだと思う。そのための時間とエネルギーを費やす努力なくして、この不毛な競争の監獄から抜け出すことはできないだろう。 伊藤穰一が語っていた---経済的な成長が何よりも優先される時代は終わった。お金は既存の社会の中での、ただの約束事に過ぎない。お金が人を「ハッピー」にはしてくれない。お金自体に価値はなく、お金をバリューに変えていく技術や手段こそが大事---心にグッっとくるメッセージをシンプルな言葉で伝えてくれて、私はとても感激した。「ハッピー」になること。そういうシンプルな考え方が、今の時代に一番必要なことかもしれない。今はまだ「ハッピー」を測る物差が揃っていない。私たち自身のライフスタイルの選択の仕方が問われているのだと思う。 さて対談が終わり、次のセッションは『電子出版の可能性』というテーマだった。Adobe社のebook Readerのデモンストレーションがあり、その後にスピーカーとして登場したのが日本でebook市場の先陣をきっている、イーブック イニシアティブ ジャパンの鈴木雄介という方だった。私はこの方のスピーチに大変な感銘を受けた。ビジネスの話でこんなにも共感を持ったのははじめてな気がする。私はこの方の名前を、実は半年も前から知っていた。すっかり忘れていたのだけど。親しい知人が私を紹介したいと言ってくれていたのだ。今日ここでその人にお会いするとは、まったく思ってもみなかった。これも人の巡り合わせなんだろうか。講演の後で追っかけていってごあいさつしたら、後日あらためてお話を聞かせていただけることになった。とてもうれしい。 その後の時間はいろんなことを考えてしまって、人の話がまるで頭に入らなかった。電通と博報堂の人がそれぞれ、Web上の広告展開や新しいビジネスチャンスについてのスピーチをしていたが、そんなことはどうでもよかった。脳天気に新しい技術を披露しまくるプレゼンテーションが、ひどくしらじらしく感じられた。 この業界は変化が激しく、少し怠けるとすぐに取り残されてしまう。ずっと新しいことを勉強しないといけないのは大変だれど、楽しいことでもある。私にとってはとても収穫の多い2日間だった。

■2001年11月7日（水）

今日と明日は【JPC Conference 2001】に通う。 JPC (Japan Publishing Consortium)は「急速に変化するパブリッシング環境における問題解決などを、ユーザ、ベンダーが共に解決していくため」に設立された任意団体。数年前から、この会が主催する定例セミナーなどに参加する機会があって、その活動の意義についてずっと関心を持っていた。会社にいる間は日々の業務に手一杯で、なかなかこういう勉強の時間を継続できなかったけれど、フリーになったことを契機に、私も個人の資格で会員になることにした。 このイベントに参加するのは２回目。とても面白そうな課目が揃っていたので、朝早めに起きて会場の多摩美キャンパスまで足を運んだ。今日は「デジタル送稿DAY」を掲げたコンファレンスとセミナーが開催された。午前中私が選んだセミナーは『カラーマネージメント、リモートプルーフ、PDF etc...最新ワークフローによる雑誌制作の現場』、午後は合同のコンファレンスで、電子送稿の実情やそのワークフローのあり方や問題点、課題についてのスピーチやディスカッションがあった。午前10時から始まって、終わったのは夜の7時近く。こんなに長い時間集中して講議を受けたのは、大学にいる時さえなかった気がする。終わる頃にはもうぐったり…。いろいろ考えさせられて、とても良い時間が持てたのだけど。 考えたことを少しここに書き留めようかと思ったけれど‥‥もう眠たいのでやめておこう。また時間のある時に自分なりに整理してみたい。明日も一日同じスケジュールだ。 □JPC...http://www.jpc.gr.jp/

■2001年11月6日（火）

今日は青山で、「コチャニオーケスター」のライブに行ってきた。とてもとても素晴らしいライブで、今になっても興奮がさめない。 コチャニオーケスターは、マケドニアのジプシー・ブラス・バンド。近頃のジプシーブームで、その来日の機会に幸運にも立ち会うことができた。ちょっと退屈な演奏の前座の後、汽笛のような高らかな音色ととも登場したメンバー達。その最初の一音で、私はすぐに魅了されてしまった。会場はあっという間に別の世界に一変してしまう。早いリズムに乗った力強い演奏と、ちょっと哀愁感を誘う独特なメロディ…。たった10人の編成なのに、信じられないほど多様で、表情豊かな音が溢れ出してくる。ふと冷静になって見渡すと、メンバー達は普通の身なりおじさん達ばかり。腹が出てたり、頭が薄かったり、お世辞にもカッコいい外見ではない。だのに演奏している彼等はどうしてあんなにも魅力的で、神々しいのだろう。彼らの振る舞いのすべてに、うっとりしてしまった。 さっきから、ライブ会場で買ってきた彼らのCDを聞きながら、この文章を書いている。間違いなく彼らの音楽に違いないのだけど‥‥なんだかとても物足りない。ライブで聞くのとCDで聞くのと、どうしてこんなにも印象が違ってしまうんだろう。彼らのような音楽は、どこかに囲ってしまうと、それはいつも違うものになってしまう。 でも、そんなことはどうでもいい。思いがけずこんな素晴らしい時間を持てて、今日は本当に幸せな気分。やることはあるけれど、明日は朝が早いしこのまま寝てしまおう。

■2001年11月5日（月）

9月以来ずっと取り組んできた諸々のことが、ようやく少し落ちついてきた。まだしばらくはやることいっぱいあるけれど、ちょっと先が見えてきた気がする。気持ちに余裕ができてくると、今までできずにいたことがあれこれ気になり始める。 今月末のデザインフェスタのことも、まだ何も準備していない。いいかげん何を出品するのか決めないと。ずっと手をつけられなかった仕事もたくさん溜まっている。私の仕事の遅さに寛容な知人達も、いい加減怒っていることだろう。仕事を繋いでもらえるチャンスを、たくさん潰してしまった気がする。営業するためのポートフォリオも未だに用意できていない。そろそろ先のことを考えた仕事をしないといけないな。食べていかないといけないんだから。

■2001年11月4日（日）

打ち合わせで池袋に行った帰りに、西武にくっついてる本屋さんに行った。ここの本屋さんは、私がよく通ってた頃とはずいぶん変わってしまった。棚づくりの質が変わったことについて、本好きの友人達とはあれこれ文句を言ったりするのだけど、やっぱりここに来るとたくさん本を買ってしまう。何も買わないつもりで立ち寄ったのに、結局また一万円近く買い物してしまった。先週も別の本屋でたくさん買ってしまったばっかりなのに。生活が変わっても、身についてしまった生活習慣はなかなか変えられない。いつまでたっても浪費癖が抜けないな。 コーヒーの豆が切れそうだったので買って帰った。一週間で200ｇの買い置きがなくなってしまうのは、自分としてはかなり早いペース。近頃は食事するより、お酒の飲むより、美味しいコーヒーを飲む時が一番嬉しく思える。

■2001年11月1日（木）

10月はなぜかアクセス数が急に増えた。1,000件以上カウントが増えているので、今までの月の倍以上。どうしてなんだろう？リンク先も増やしていないのに。リニューアルしたのが良かったんだろうか？ ホームページというものは、たくさん手をかければかける程人が立ち寄ってくれるもののようだ。しばらく放っておくと、すぐに人の足が遠のいてしまう。手がかかるけれど、自分のサイトにだんだん愛着が深くなる。誰かが見ていてくれるんだなぁと思うと、やっぱり素直に嬉しいものだ。