■2002年2月28日（木）

今日はビックサイトに『ギフトショー』を見に行ってきた。 印刷やデザインの仕事をやっていると、紙媒体以外のもの、販促グッズや粗品等の提案を求められる場合がある。そのためのルートづくりと情報集めのために、こういう場もチェックしておかないといけない。一日時間をかけてゆっくり見るつもりでいたのに、急な打ち合わせが入ってしまって、やっと会場についたのは夕方の4時。閉会まで1時間しかなかったので駆け足で見て回った。でも結局、ステーショナリー関係の1ブロックしか見れなかった。ちょっと残念。 たった1ブロックしか見れなかったのに、会社にいた時にお世話になった業者さんのブースが3件もあった。びっくりして挨拶したら、ちゃんと覚えててくれてとても嬉しかった。みんなみんな、私の知り合いの業者の人達はいい人ばかり。 私は「恩や義理」というものが、とても大事だと思っている。自分がたくさん恩恵を受けたことへの感謝の気持ちは、ずっと忘れないでいたい。相手が「人」であっても「作品」であっても。その感謝の気持ちは、いつか必ず形にして返していきたいと思う。互いに相手のことを思いやれる気持ちこそが、人としての一番大事な資質だと思うから。 一方で世の中には、自分のことばかりを大事にする人達もいる。目先の損得ばかり考えて、人の気持ちを踏みにじっても平気でいられる人達。そんな人達にもそれなりの理屈があって、それなりの幸せの形があって生きているのだとは思う。でも私は絶対にそういう人達と一緒になりたくない。どんなに大変な思いをしたって、違う道理で生きていきたい。 今進めている仕事の話がうまくいけば、ずっとお世話になってきた人達にやっと私から仕事が回せるかもしれない。そうなるとうれしい。少しくらい無理をしてでも、なんとかこの話をまとめたいな。

■2002年2月27日（水）

この一週間ほどの間に5回も飲み会があった。よくもまぁこんなに飲み続けていられるもんだと、自分でも感心してしまう。夜な夜な遊んでいられる立場じゃないんだけど。でもそうした機会にいろんな人と知り合えて、いろんなつながりができたりするのは、本当に楽しいことだ。 先日、昔からの親しい友人とひさしぶりに会って、飲みながらいろんな話をした。途中キューブリックの話で盛り上がってるうちに、終電のことも忘れて話し込んでしまった。映画や小説や歴史や宗教や哲学についての話。人が聞いたらあきれてしまうほど真面目な話。日々の生活の上では何の役にも立たない話---そんな話に夢中で話し込めることが、私にとっては何にも代え難い大事な時間だと思える。

■2002年2月20日（水）

1月は印刷の仕事ばかりしていたら、2月になってからデザインや制作の仕事が続いた。ここんところ仕事が途切れていたら、この二日のうちに急に何件も印刷の見積りが入ってきた。またしばらく印刷の仕事に戻るのかなぁ。 それにしても、もう少しバランスよく仕事が入ってきてくれたらいいのにと思う。最近は家にこもっての仕事が続いたので、すっかり昼夜が逆転した生活になってしまっていた。印刷の仕事は人に会ったり外を歩くことが多いので、また生活の時間帯を戻さないといけない。寝る時間も食事する時間もずっと不規則で、効率が悪くって仕方がない。なんとかならないものだろうか。

■2002年2月19日（火）

今日お客さんから携帯に電話かかってきて、おもむろに「事務所の電話番号変わりましたか？前に聞いてた番号にかけたら通じなかったものですから」と言われた。「いえいえ、そんなことはありませんよ、きっとかけ間違えたんでしょう」と話した後で不安になって受話器をとったら……電話が止められていた。…はずかしい。 いつも通りネットも使えていたのでまったく気づかなかった。そういえばすいぶん前に支払いの督促状が来てた気がする。忘れてた。どうやらADSLと一般通話は、まったく別のサービスらしい。たとえ通話が止められてもADSLはつながったままであることを、今日初めて知った。 まぁそんなことに感心してもいられないので、急いでコンビニに払いに行ったら、ほんの一時間ほどで通話サービスが戻ってた。すごく便利な世の中のような、やたら面倒な世界になっているような、なんか複雑な気持ち。

■2002年2月17日（日）

ひさしぶりにライブに行ってきた。天才不思議絵本画家スズキコージ率いるコージズキン ジプシーバンドのライブ。ずっと楽しみにしていたのだけど、Web制作の頼まれ事をしてたら遅い時間になったし徹夜明けで疲れてたので、今回はやめにしようかとも思った。でもこれを逃すと次のライブがいつになるやらという気もするので。夜になって一人で出かけていった。 少し遅れて会場に入ったら、もうたくさんの人で満杯。足を踏み入れた途端、そこはもう和製ジプシーワンダーランド！今回もコージさんのテンションが高く、不思議エネルギー放ちまくってるし、AYUOさんのギターはかっこいいし、HONZYのバイオリンにはうっとりさせられるし、沢田さんのパーカッションに心踊る。AYUOさんのソロも一曲あって、HONZYのピアノとAYUOさんのギターとの駆け引きがムチャクチャかっこよかった。ベリーダンサーのMAHAさんの舞も素敵だった。すぐ目の前でMAHAさんが踊ると、長い髪と衣装が揺れる度にとてもいい香りがする。（ベリーダンサーたちは何の香料を使ってるのだろう？）みんなみんな本当に素敵な人達！たった2時間半ほどの時間だったけど、本当に楽しいひとときだった。 ライブはいいな、やっぱり。たくさんの元気をもらえる。3月は行きたいライブがたくさんある。今から本当に楽しみ。 http://zuking.com/

■2002年2月15日（金）

仕事がひととおり片付いてしまったので、今日はなんとなくだらだらと過ごしてしまった。さて次の仕事をどうしたものか。こういう時にこそやっておくべきことはたくさんあるけれど、根っからの怠け者の私は、追い込まれないとなかなか仕事ができない。まぁ、こんな時はジタバタしても仕方ない。のんびりとだらだらした時間を楽しみたい。 先日手にした工藤順子のアルバム『平日マチネー』に「レイゾウコ」というとても素敵な曲があった。 「怠惰な私の　冷蔵庫　見るも恐怖　賞味期限 　今日こそ断固整理せんと　夕立眺め意を決す」 ここまでは、なるほどなるほど。一人暮しの人間にはよくわかる日常の出来事。そしてこの「私」は冷蔵庫に生まれし罪なき生命（？）に対面するのであるが、そのあとに続くフレーズがすごい。 「怠惰な私と　生命体　黙って座って　並び居る 　夕立過ぎし　四畳半に　澄みし風吹く　そよそよと 　部屋の隅には　蜘蛛の子揺れる　叩く理由もなし 　庭一面に　雑草波打つ　むしる理由もなし 　見渡す限り　命満ち満ち　ああこの世は美し」 こんな詩を書いてしまう工藤順子といういう人に、私は感激せずにはいられない。動植物や風景に対するこのまなざしのあたたかさが素晴らしいのだと思う。このアルバムを聞いてると余計な肩の力が抜けて、普段の何気ない生活がとても豊かで楽しいものに思えてくる。 ああこの世は美し---なんて気持ちいい世界。

■2002年2月13日（水）

結局締切りを一日のばしてもらって、やっと今日描き終えた。途中まで描いてた絵がどうしても許せなくなって、今日の朝になって最初から描き直した。朝8時から描き始めて、イラスト2点書き終わったのが夕方3時過ぎ。自分のペースとしては記録的な早さ。途中泣きたくなるほどつらかった。でも人間やる気になればなんでもできるもんだと、あらためて思ったりした。 一仕事終ったあとは、とても気分がいい。苦しかったことはすぐに忘れてしまうし、また絵を描きたいと思う。悩んでいた自分がバカみたいに思えてくる。私にはイラストレーターとしての充分な技量がないのだから、それを補うためには人並以上に時間と手間をかけて、気持ちをこめて描いていくしかない。当たり前のことだけど、私は私らしい絵を描いていけばいいのだろう。 さすがに今日はくたびれた。早めに寝よう。明日はいいかげん請求書も書かなくちゃ。

■2002年2月10日（日）

あさってまでに連載のイラストを2本仕上げないといけないのだけど、なかなか気分がのらない。どうにかがんばって鉛筆を動かしてみても、へたくそな自分の絵にうんざりしてしまう。 なんとなく元気が出ない。

■2002年2月9日（土）

河井英里の『Prayer』というアルバムが、最近私の一番のお気に入り。毎日、何度も繰り返し聞いている。そのアルバムの中の『Oh My Glory』という曲は、こんな一節で始まる。 Oh my love　Oh my glory　Oh my dream Everything is in kilter 「私の讃えるもの」という言葉が、私にはとても重く心に響く。こういう美しい言葉が示すものから、私たちの日常はなんてかけ離れているんだろう。私たちが何より大事に思うもの、信じているものについて、自分自身に問い直す時間がなかなか持てないし、ましてやそんなことを人と語り合える機会がない。どんな立派な身なりで着飾ったって、どんな美味しいもので腹を満たしたって、たくさん人達に囲まれていたって、自分の「讃えるもの」「信じるもの」をこの世界に見い出せないとしたら、それはやっぱり虚しくて寂しい生活だと思う。 河井英里の美しく深遠な歌声に接していると、空気が凛として心が緊張する。忘れかけていた大事なことを思い出すような気持ちになる。

■2002年2月8日（金）

雑誌に連載しているイラストについて、編集者の方が「読者プレゼントの葉書が戻ってきているのですが、海老名さんのエッセイと横山さんのイラストを気にいっている人が多いですよ。」と教えてくれた。こういう声を聞かせてもらえると本当にうれしい。誰かが見ていてくれてるんだなぁって、感じることができる。 私は基本的に楽観的で単純な人間だ。 いい仕事がしたい。いい作品を残したい。私が形にしたものを、たくさんの人に喜んでもらいたい。それが私のしあわせ。おしまい！

■2002年2月7日（木）

私の仕事環境は2台のMacと3台のプリンター、2台のスキャナー、2台のMO、CD-Rなどなど。いちおうネットワークで結んであって、共有させたり、プリントサーバーにしたり、ネットにつないだりして、忙しい時はフル回転で作業をする。いよいよ仕事が追い込みになると、どっちがどこにつながっていて何の処理をしてるんだかわからなくなったりもする。複雑で面倒なのはパソコンのことだけじゃない。日々向き合っている仕事そのもがとても煩雑だ。 今私がやってる仕事は、印刷とデザインとイラストの三本の柱。端から見るとどれも同じ分野の仕事に見えるのかもしれないが、やってる当人にとってはそれぞれ違う性質のものだと感じている。印刷の仕事をしていると、商売人としての裁量とセンスが求められる。デザインの仕事ではプロフェッショナルとしての技能を問われる。イラストの仕事では作家としての個性が大事になる。それぞれ必要となるスキルも対応する手段も違っていて、その切り替えにいつもとても苦労させられる。いろんなことができる楽しみもあるのだけど、立ち止まったり悩んだりすることも多い。自分がいったい何をしてるのか、何がしたいのか、時々わからなくなってしまう。どれも中途半端な仕事しかできていないようで、そんな自分がたまらなく嫌になることもある。私にはもともと度量を超えたことなんだろうか。 でも自分でこんな仕事のスタイルを選んだんだから、とにかく前に進んでいくしかない。少しづつではあるけれど仕事がつながってきた気がするし、評価される機会も多くなってきた。それぞれ求められる仕事の内容は違っても、私なりの感覚や個性を、同じレベルでそこに表現していけたらと思う。

■2002年2月6日（水）

昨日の朝からもう20時間も休みなく働いた。明け方になって冷蔵庫にあった冷たいお惣菜をビールでお腹に流し込む。おいしいともまずいとも感じない。せめて火を通してあっためればもう少しまともな食べ物になるんだろうが、そういう気分にもなれない。なんなんだろう、こんな生活って。 いくら強がっていたって、ときどき自分の能力のなさに情けなくなってくる。自分には技術も経験も努力も足りない。もっとちゃんと仕事をこなせるようにならなければ。

■2002年2月2日（土）

打ち合わせで渋谷に出た折HMVに寄ったら、ずっと探していたCDがみつかった。うれしくてうれしくて、あんまり嬉しいので買う必要のないCDも2枚買ってしまった。CDショップにいったん足を踏み入れると、何も買わずに出られることはめったにない。私には我慢とか倹約とか計画性とか、そういうものはどうやら身につかないらしい。やっぱりがんばって稼ぐしかないんだな。

■2002年2月1日（金）

去年買っておいたPC会計のソフトがどうしてもみつからない。インストールをしないまま投げだしていたら、いつのまにか見当たらなくなってしまった。家中をもう何日も探しているのにどうしてもみつからない、どうして肝心な時に手許にないんだろう。これはまさにフロイトの言うところの「錯誤行為」というやつだな。経理会計に向き合いたくないという深層の意識が作用して「紛失」という現象を生み出す。「一方は妨害する意向、他方は妨害を受ける意向と呼びうる二つの相異なった意向が干渉しあう結果、錯誤行為が起こる」…なんて冷静に分析してもしょうがないか。単に部屋が散らかってるのが悪いのかな。 しかし困ったな。バカなこと言ってる場合じゃないや。