道草の手帳

･･･Note･･･
日々の生活の中で思いついたことなどを、自分自身の覚え書きとして気ままに
つづっています。あくまで個人的なものなので、他人が読んで面白いものでは
ないと思いますが、関心を持ってくださる方はどうぞおつきあいください。　

■2002年8月25日（日）　

今日は先日納めた演劇のパンフレットの公演を観に行ってきた。『空飛ぶ雲の上の団五郎一座・アチャラカ再誕生』というタイトルで、日本の喜劇の原点を見つめ直し、そして「お笑い」の新しい地平を築いていこうとする、かなり野心的な旗揚げ公演。とてもとても楽しみにしていたのだけど、その期待を超える内容で本当に面白かった。ひとつひとつのエピソードのつくりがとても細やかで丁寧で、そして展開にスピードがあって、ナンセンスなギャグの連発に、思いっきり笑わされた。あんなにも笑わされたのは、本当にひさしぶり。こういう素晴らしい舞台に、私は立ち合うことができて、本当に幸せだなって思った。TVに食われまくっている今日の「お笑い」の現状を、変えられるとしたらこの時からなのかなって、そう思えるくらい歴史的な場面に立ち会えたんだと思う。

今日はひさしぶりに会う友人とこの公演を観て、たくさん話をして、映画も1本観て、お祭りのように楽しい一日だった。大変な仕事が続いた後で、とてもいい息抜きができた気がする。

■2002年8月24日（土）　

この一月にやった仕事・・・44PのCD付うた絵本のデザイン・制作と、レーベルのデザイン、40万部のチラシの制作。150Pの演劇パンフレットの印刷管理。16Pの季刊誌のデザイン・制作、印刷管理。それに加え細かな仕事のあれやこれや。とてもひとりの人間でこなし切れる量ではなかった。途中もうダメだと思う瞬間が何度もあった。「すみません」「遅れます」「まだできません」という言葉を、何十回繰り返したかわからない。でも思い掛けない人から仕事を手伝ってもらえたり、日頃お世話になっている業者さん達のサポートにたくさん助けられて、今回もどうにか乗り切ることができた。不思議なもので、全て終ってしまえば、まだもう少しがんばれた気がする。あの時ああやっていれば、もっとここが良くなったはずなのに…と思ってみたり。でも自分にできる限りのことをやったつもりだ。

昨日は演劇のパンフレットと季刊誌の印刷が仕上って、見本が手許に届いた。この仕事をやっていると、この瞬間こそが最高に嬉しい瞬間だ。苦労して仕上げたものを手にした時の、自分だけの至福の時間…！そしてその仕上ったものを納めて、お客さんが喜ぶ顔を見ることができた時、電話で「届きました」とホッとした声を聞かせてもらえた時、私はがんばって良かったなって、この仕事をやってて良かったなって思える。
私は特別な才能を持っていないし、人より秀でた技術を見につけているわけではないし、自慢できる程の地道な努力を重ねてきたわけじゃない。でも私は自分に与えられた仕事に対して、いつも全力でやっている。手を抜いたりしない。仕事においては嘘はつかない。人に媚びたりしない。余計な駆け引きもしない。そうやってきたからこそ、こうやって仕事を続けていられるんだと思う。先のことなんて、結果なんてどうなるかわからない。とにかく、目の前にあることを精いっぱいやっていくだけのことだ。

今回の一連の仕事の中で、「もうダメだ」「これ以上がんばれない」と思える場面が何度もあった。でももっと大変な場面を、私は学生時代に経験している。懐古の印象が混じって、そう思えてしまうのかもしれないけれど。あの時できたことが今できないはずがない、そう思うとまだもう少しがんばることができる。あの頃に、何にも代え難い、誰にも理解し難い苦しい場面を、たくさん経験しておいて良かったなって今は思える。若いうちに苦労しておくのはいいことだなって、最近しみじみ思ったりしてみた。歳をとったのかな、私も。

■2002年8月19日（月）　

働いても働いても、仕事が終らない。片付かない。楽にならない。
ひとつ片付いたと思ったら、また次の仕事。後回しにしていたことの、あれやこれや…。みんな投げ出して、どこか遠くに行ってしまいたい気分になってきた。

■2002年8月3日（土）　

今日は原稿を届けに出掛けた後、次のお客さんとの打ち合わせの時間が急にずれ込んでしまったため、ぽっかり時間が空いてしまった。特に用事もなくお茶の水の辺りをブラブラしていたら、ふと画材屋さんの前を通りかかった。透明水彩の絵具を何色か切らしていたことを思い出し、ちょうどいい機会と思って買って帰った。
考えてみるに、私が透明水彩の絵具を買うのは、かれこれ15年ぶりくらいになる。当時私は大学生で、アルバイトをしていた吉祥寺の画材屋さんで数色買い足して以来のことだ。その前となると20年くらい前、高校１年か2年生くらいの時に遡る。この時に買ったNOUVELという国産メーカーの安物の18色セットの透明水彩を、今もずっと使い続けている。水彩画の教書に習い、パレットにあらかじめ絵具を固めておいて、その都度筆に水を含ませて絵具を溶いて使っていると、案外かなり長持ちする。（→私のパレット）私はあまり大きな絵は描かないし、広い色面を塗る時はガッシュや顔彩を用いる。普段仕事で描く絵はほとんどがA4以下なので、一枚描き上げたところでどれほども減りはしない。そんなわけで同じ絵具、同じパレットと、私はもう20年もつき合ってきたわけだ。

私は画材には結構こだわっている。鉛筆はカステル、筆はラファエロ、ガッシュはペリカンという具合で、求めるものが高価であっても躊躇しない。でも何故だか透明水彩だけは、この安っぽい国産のものを使い続けている。どこかの時点で、もっと発色のいい定評のあるものに切り替えても良かったのだけど、私の絵にはこの絵具の少しくすんだ色合いが合ってるようなのだ。それに20年も親しんできただけに、どの色とどの色を合わせるとこういう色になるとか、このくらいの水の含ませ加減でこのくらいの色の伸びになるという加減が、手と頭に染み付いているのだ。今更違うものの性格を覚え直すのは、ひどく面倒な気がするし、勇気がいる。
今日も本当は同じメーカーのものを探したのだけれど、もう扱っていないということなので、仕方なくホルベインの透明水彩を買ってみた。昔はどこの画材屋でも扱っていた商品なのに、どうして最近は見かけなくなったんだろう。もう生産していないんだろうか。だとしたら、とても残念なことだ。近頃は画材の売れ行きがひどく落ち込んでいるらしいので、時代の流れの中では仕方ないことなのかな。

それにしても、絵を描いてお金をもらう立場の人間が、こんなにも久しく絵具を買い足さなかったなんて、やっぱりおかしいだろうか。いくら絵具の減りが少ない描き方とはいえ、いかに作品が少ないかを物語っているようだ。どこのメーカーのものだったかわからなくなってしまうくらい絵具を使いまくって、たくさん作品を描き続けないといけないんだろうな。反省しなければ。絵に対する自分の不精さを恥ずかしくも感じ、一方で自分と絵具達とのつきあい方を、ちょっとおかしく思った。

さて15年ぶりに新しく仲間入りした絵具達。私のパレットに馴染んでくれるだろうか。

■2002年8月2日（金）　

無責任な人間はきらいだ。いいかげんな人が多くって、イライラしてしまう。でも今は腹を立てることにエネルギーを使う余裕もないから、とにかく自分のやるべきことを、ひとつひとつ片付けていくしかない。
明日は150Pのパンフレット入稿がある。ひとつひとつデータをチェックしていくのに、いったいどれだけ時間がかかるんだろう・・。この土日の間に12Pの季刊誌の制作もやらないといけない。来週はイラストの締切りが2本あるし・・・。これからの一週間は、いよいよ修羅場になりそうだ。休めるうちに休んでおこう。

■2002年8月1日（木）　

少し嫌なことがあって、ちょっと気が滅入っている。
私は基本的に人は誰でも信じることにしている。よっぽどのことがない限り、疑ってみたりはしない。頼まれたことには、精いっぱい自分にできる限りのことをやってみる。騙されて損をすることがあったとしても、自分の気持ちの中でケリがつくことなら、まぁいいやって思ってしまう。でも誰かの嘘が、自分だけでなく周りの人達にまで迷惑かけることがあったとしたら、それは許せないことだし、我慢ならない。
仕事も身近な人づきあいも、すべて信頼関係で成り立っている。その信頼を探る判断の基準などなく、信頼とはお互いの勝手な思い込みでしかないんじゃないかと思う。そしてそれは善意ある思い込みだ。その善意こそが、この世界に不可欠なもので一番大事なものだと、私は思うのだけれど---甘いだろうか？
ときどき、人の気持ちを傷つけることを平気でやってのける人達がいて、本当にがっかりさせられる。