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Writings

去るもの追わず

ずっと定期で仕事させてもらっていたお客さんから、制作物一式を来月から別の会社に移管することになったと告げられた。残念ではあるけれど、お客さん側の事情があるのだから仕方がない。昨年はずっと仕事が手一杯な状態が続いて、自分の仕事の質が落ちていると反省しているところだったから、まぁちょうどいいタイミングだったように思える。これでちょっとは余裕を持って仕事できるようになればいいし。今の自分を評価してくれているお客さんを、これからはもっと大事にしていきたい。

新しく出会うお客さんもいれば、去っていくお客さんもいる。ずっとそのくり返しなんだろうな。「来るもの拒まず、去るものは追わない」のが、仕事の上での私の基本的なスタンス。深追いしないのが、たいていの場合、賢明な判断になり得ると思う。仕事でもプライベートでも同じかな。なんて。実際は、そんな簡単に割り切れる場面は少ないのだけれど。時には追いかけることもある・・・かも(笑)

長い髪の女

私のこれまでのスケッチブックには、髪の長い女の人がたくさん描いてある時期と、髪の短かめな女の人ばかり描いてる時期がある。それらを見返してみると、髪の長い女の人を描いてる時期の方が、自分としてはなんとなく良い絵が描けてた気がする。特に理由はないのだけど。

子供の頃からずっと、髪の長い女の人への憧れがある。思い起こすと、自分の思い出の中で今も印象深い人達は、たいていみんな髪が長かったような気がする。

そういえば、昔、グリム童話に題材をとったシリーズを描いてた頃、ラプンツェルの話がどうしてもうまく描けなくて、結局未完成で終ってしまった。その後も何度か描き直そうとしたのだけど、結局仕上げられなかった。思い入れがありすぎて、描けなかったのかな、と今ふと思ったりした。
ラプンツェルの絵・・・いつかもう一度、チャレンジしてみたい。

印刷という仕事

印刷って本当に難しい。何年この仕事に関わっていても、つくづくそう思う。たくさんの異なる現場をまたがずには仕事が成り立たないので、思いもよらぬ時に、思いもよらぬ形でトラブルが起きたりする。万全の手順を踏んでいても、それでもトラブルをさけられない時がある。そういう時は、起きてしまったトラブルを悔やんでも、誰かのせいにしても仕方ないから、とにかくその時点からできることを可能な限り考え詰めて、全力で対処するしかない。言葉にしてしまえば当たり前のことなんだけど、それがなかなか理屈通りに進まないから、印刷という世界は本当にやっかいなのだ。

理想と現実と・・・そのはざまに気持ちが揺れる。自分なりの理想を掲げて今の仕事を始めたのだけれど、時折、挫折しそうな気分になってしまうこともある。仕事が増えれば増える程、困難な場面にぶつかる機会も多くなり、予期せぬトラブルに出くわしたりもする。そんな時は自分の能力の限界を痛感させられて、立ち直るのにも時間がかかる。

「会社」という看板やフィルタを介さずに、一人の個人の立場で印刷という仕事を成立させていくには、本当に苦しい場面が多い。自分を守ってくれるものは何もない。リクエスト通りに仕事を貫徹させて当たり前で、感謝される機会などめったになく、問題が起きた時には相手からの怒りや非難を直接ぶつけられてしまう。相手との関係が気持ちの部分でがもつれてしまうと、もう収拾のしようはなくて、いくら筋道の話、理屈で理解を求めても場が治まらない。結局最後に持ち出されるのは値引き交渉。金銭面での解決になる。だからいつまでたっても貧乏な状況は変らない。。。

なんでこんな実りの少ない仕事に、自分は携わっているんだろう? それでもやっぱり、好きだからなんだろうなぁ。

分かち合う

近頃道を歩いていて、ときどきため息をついてしまう。いい歳のおっさんがため息ついてるのは気持ち悪いからやめようと思うのだけど、ふとまた、ため息ついてしまう。

人と一緒に仕事をしていると、人がどんどん信じられなくなってしまうようで、そんな自分が嫌で前の会社を辞めた。でも一人で仕事始めても、人と関係を持ちながら仕事することに変わりがないのだから、結局状況は何も変わらない。自分の身を守ることばかりを考えてる人が多すぎて、ときどきやりきれなくなってしまう。

少し前のことになるけど、『少女の髪どめ』というイラン映画のチラシに綴ってあった監督の言葉が、とても美しく、印象に残ったので書き留めておく。

---「少女の髪どめ」は過去30年に渡ってイランで生活してきたアフガン難民の一端を示しています。私たちは人種や肌の色に関係なく、みんな人間という存在なのではありませんか?
ですから、もしも世界のどこかで罪のない人々が害を被るようなことがあれば、私たちはその痛みをみんなで分かち合うべきです。
愛にはあらゆる境界線を超える力があります。世界が戦争ではなく、愛によって支配される日を夢見ようではありませんか。
---マジッド・マジディ

お互いに奪い合うのではなく、苦しいこともうれしいことも、お互いに分かち合うこと。自分だけのことに完結しない。そういう考え方がとても大事なんだと思う。皆がそういう地平に立てれば、私たちの世界はもっと豊かになるんだと思う。

習い事

今、とある専門学校の「学校案内」を作っている。時間のない中、自分なりに一生懸命作っているつもりなのだけど、なかなかしっくりした形にまとまらない。ふと気付いたのだけど、私は今まで「学校案内」なるものを、大学受験の時以来、ほとんど手にしたことがない。実際に手にとる人の気持ちがわからないから、具体的なイメージが掴めないのかもしれない。

私は、「先生」という立場の人から何かを教えてもらうのが嫌いで、専門学校とか教室とか、そういう類いに通ったことがほとんどない(唯一通ったのは、小学生の時のソロバン教室くらい)。印刷もデザインもパソコンのことも、一度も学校には行かずに、自力で覚えた。基本的に、人から指示を受けるのが嫌いなのだ。私は、かなり頑固で、わがままで、人の助言を聞かない。昔からずっとそうだった。

人の助言を聞けない自分の性格は、できることならこれから少しでも改めていきたいなって思う。でも、ずっと自己流で通してきたことで良かったこともある。そのひとつが、絵についてのこと。どこかの時点で専門的な教育を受けていたら、私は絵を描き続けていなかったんじゃないかって思う。「絵は、人に教えてもらうものじゃない」っていう、父の言葉が与えた影響が大きかったのだけど。
でもそれは、今になって整理して考えられること。昔、「美大に行く、行かせない」で、父と大喧嘩したんだよなぁ・・・。

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